無電解ニッケルめっき(リン、Ni-P)とは?種類別の特性を解説

無電解ニッケルめっき(リン、Ni-P)の特徴
無電解ニッケルめっき(Ni-P)は、還元剤に次亜リン酸を用い、還元反応によって表面にニッケルーリン皮膜を析出させるめっきの手法です。
皮膜は硬度が高く、耐摩耗性に優れた仕上がりになるのが特徴です。なお、ニッケルめっき内に含有するリンの量によって、めっきの析出の仕方が変わり、耐食性や磁性特性などの機能性に違いが生まれます。
無電解ニッケルめっきは電気を使わず、還元反応により、対象の表面に金属を析出させます。よって、金属だけでなくプラスチックやセラミック、ガラスなどの絶縁体にまでめっきすることが可能です。さらに、複雑な形状の製品・部品にも膜厚が均一なめっき処理ができるという特徴もあります。
無電解ニッケルめっき後に、熱処理(ベーキング処理)を施すことで硬度が1,000Hv程度に達し、耐摩耗性が向上するため、長期間何度も稼働させる必要がある製品などへのめっき処理にも最適です。
また無電解ニッケルめっきは、素材とめっき層が剥がれないための下地めっきや、耐食性や耐摩耗性、その他機能性の向上などを目的とした表層めっきとしても幅広く活用されています。
無電解ニッケルめっき(リン、Ni-P)の原理
無電解ニッケルめっきの原理を、より詳しく説明いたします。まずは下記イメージ図をご覧ください。
●無電解ニッケルめっき反応イメージ図
無電解ニッケルめっき液中では、母材の表面(母材そのものや下地層)が触媒となり、次亜リン酸(H2PO2-)が亜リン酸(H2PO3-)へと酸化します。その時に放出される電子(e―)をニッケルイオン(Ni2+)が受け取り、母材表面にニッケルとして析出します。
また、ニッケルの析出と同時に水素(H2)が発生し、この水素(H2)と次亜リン酸(H2PO2-)が反応し、リン(P)が生成されます。このリン(P)とニッケルが一緒に析出して、ニッケルーリン被膜となります。
無電解ニッケルめっき(リン、Ni-P)の種類(低リン・中リン・高リンタイプ)
無電解ニッケルめっき(Ni-P)は、リンの含有量によって、おもに以下の3つのタイプにわけられます。
- 低リンタイプ……含有量1~4wt%程度
- 中リンタイプ……含有量5~10wt%程度
- 高リンタイプ……含有量11~13wt%程度
そして、前述の通り、リン含有量によって、めっき被膜硬度や耐摩耗性等の特性に違いがあります。
●無電解ニッケル-リン タイプ別特性表
- 低リンタイプ
硬度が高く耐摩耗性に優れているのが特長です。酸に非常に弱く、アルカリには強い耐性を持ちます。
また、ほかのタイプに比べると、はんだ濡れ性は良好ですが、耐食性は劣ります。
- 中リンタイプ
硬度や耐食性、耐摩耗性、耐酸・アルカリ性、はんだ濡れ性のバランスが良いため、様々な用途で使われています。
- 高リンタイプ
耐食性、耐酸性に優れています。ただし、はんだ濡れ性が劣ります。
めっき処理を施す製品や部品の使用用途などに応じて、適切なタイプを見極めることが大切です。
無電解ニッケルリンめっきとホウ素めっきの違い
無電解ニッケルめっきには、ニッケルーリンめっきのほかに、還元剤にホウ素化合物を用いたホウ素めっき(ニッケルボロンめっきとも呼ばれる)もあります。
この二つのめっきのうち、耐食性が高いのはニッケルーリンめっきで、硬度が高くはんだ濡れ性が優れているのはホウ素めっきです。
湿気や酸などによる腐食や酸化を防ぐ必要がある製品や部品に対しては、ニッケルーリンめっきを用いることが一般的です。
●ニッケルーリン被膜とホウ素めっき被膜の特性比較表
ホウ素めっきは、はんだ付け処理が必要な製品、高い硬度が必要な部品、低温でめっき処理したい製品などにめっき処理をおこなう際に採用されることがあります。
ただし、ホウ素めっきはめっき液の管理が難しく、時間やコストがかかるという点がデメリットです。
無電解ニッケルめっき(リン、Ni-P)が用いられる製品
無電解ニッケルめっきは、耐食性や耐摩耗性が高い、均一にめっき処理ができる、絶縁体にも対応できるなどの点から、多様な分野で用いられています。
シャフトやピストンをはじめとする自動車の部品、カメラや電子顕微鏡などの精密機器の部品などが代表的です。さらに、水洗金具や家電の装飾部分などのプラスチックの部品、そのほか、産業機械や医療機器、航空宇宙産業などにおいても使用されています。
上記の通り、無電解ニッケルめっきは私たちの日常生活を豊かにしてくれる身近な電化製品から、航空宇宙関連の製品や部品にも用いられており、今や多くの分野で必要不可欠な技術です。
スズキハイテックの無電解ニッケルめっき(リン、Ni-P)の技術
スズキハイテックでは、製品や部品の仕様に合わせた無電解ニッケルめっき処理に対応しています。
すべてのリンタイプが選択可能なだけでなく、アルミ材、鉄材、銅材など素材に応じた専用めっきラインが多く稼働しており、全自動装置にて短時間で効率的にめっき処理をおこなえます。
創業より110年以上のモノづくりの経験から積み重ねたノウハウと技術を駆使し、多様な素材、形状に対してめっき処理が可能です。また、これまで以上にスピーディーかつ高品質な仕上がりを目指し、最新技術や装置、検査の自動化も積極的に取り入れています。
ここからは、スズキハイテックの技術の一つ、SSNプロセスについてご紹介します。
無電解ニッケルめっき(リン、Ni-P)のSSNプロセス
SSNプロセスは、スズキハイテックが開発した無電解ニッケルめっきの独自技術です。SSNとは、Super Soldering Electroless Nickel(超はんだ濡れ性無電解ニッケルめっき)の略称です。
通常、無電解ニッケルめっきはリンの含有量が高くなるほど、耐食性は向上しますが、はんだ濡れ性が悪くなってしまいます。しかし、SSNプロセスは高リン状態でも良好なはんだ濡れ性を確保できます。つまり、SSNプロセスは、高リンタイプでのはんだ濡れ性を改善できる独自技術です。
●通常の無電解ニッケルめっきとSSNプロセスによる無電解ニッケルめっきの特性比較表
また、めっき処理は全自動化が進んでおり、濃度やpH、製品情報などを24時間分析・管理するシステムがあるため、安定した大量生産のご依頼にもお応えすることが可能です。
リンを用いた無電解ニッケルめっきはスズキハイテックにご相談ください
無電解ニッケルめっき(Ni-P)、特に高リンタイプはさまざまな用途の製品・部品に用いられる一方で、はんだ濡れ性が悪いという課題があります。
スズキハイテックの独自技術であるSSNプロセスは、無電解ニッケルめっきの耐食性はそのままに、はんだ濡れ性の向上を実現しました。分析、測定、検査装置も取り揃え、社内完結で徹底した品質管理のもと、お客様のご要望どおりの仕様でお届けします。
熟練の知識と最新のスキルを持つ技術者が、どのようなご依頼にも柔軟に対応させていただきます。無電解ニッケルめっきの品質や量産などに関するお悩みは、ぜひスズキハイテックにご相談ください。
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